『”未来”も”過去”も、僕らの手の中にある』水府学院×HASSYADAI

『”未来”も”過去”も、僕らの手の中にある』水府学院×HASSYADAI

 

『生きている意味なんかない。』
『僕には、未来なんて、ない。ずっとそう思っていました。』

『水府学院』を、2年前に出院した川満さんが、緊張した面持ちで静かに語り始めた。
短く刈り上げた髪型に、シワひとつない制服を着て、まだ少し幼い表情が残る少年たちは、キラキラした目で僕たちを見つめていた。

少年院の子供達に未来の可能性を

2018年11月。茨城県にある第一種『水府学院』で僕たちは講演をする機会をいただいた。
今回の講演を開催するきっかけとなったのは、水府学院で法務教官を務めるある方の強い想いだった。

『少年達の未来の可能性を拡げたいんです。』

若くして罪を犯し、社会のレールから外れてしまった少年たちは自分に自信を持てず、未来への希望を持つことが難しい。
そして多くの少年達が出院後も、再び罪を犯してしまうケースも少なくない。
彼らの可能性を引き出す機会がもっともっと必要だ、とその方は僕たちに話してくれた。

そんな想いを受け、全国の学校や養護施設などでも『未来の可能性』について講演を行なっているハッシャダイの勝山が講演をすることになった。

冒頭に出てきた川満さんは、3年前に水府学院を出院し、現在は立命館大学に通う学生で、偶然にも勝山が中心となって活動している「HASSYADAI COLLEGE」の一員だった。
川満さんに水府学院で講演するという話をしたところ「力を貸したい」と言ってくれ、勝山と川満さんの2人で講演をすることが決まった。

大事なのは学歴や学力よりも”想い”

講演当日、僕たちは先に教室に入り、少年たちを待った。
きれいに足並みをそろえていて、そこには一切の私語はなく、ここでの生活の厳しさがうかがえた。

『気をつけ!お願いします!!!』

あまりにも大きな声の号令に、驚いた。

法務教官の方に紹介をしていただいた後、勝山の講演が始まった。
いつもと違う雰囲気に勝山も少し緊張している様子だった。

講演のテーマは『Choose Your Life ~君たちが持つ可能性~』
最初は緊張に包まれていた教室だったが、勝山が自身の話をしていく中で、少しずつ少年たちが前のめりになっていく。

真剣な表情で、時折笑ったり、中にはメモを取りながら聴く少年もいた。

『君たちの可能性は、無限大なんだ』

『大事なのは学歴なんかじゃない、”想い”や』

勝山自身もどうしようもなかった過去から、必死に生きてきた。
壮絶な人生を生きてきた勝山の力強い言葉の数々は、確実に少年たちにの心に刺さっていた。

”夢”とか”可能性”とか言われても、分かんねぇよ

勝山の講演が終わり、川満さんの講演が始まった。

もともと水府学院にいたことを伝えると、教室がどよめいた。
簡単なプロフィールを話しただけで、少年たちは川満さんの話に釘つけだった。

そして、川満さんは水府学院にいた頃の話をし始めた。

『夢とか、可能性とか言われても、「無理だよ」ってずっと思っていました。』

『そして生きている意味なんかない。僕には、未来なんて、ない。ずっとそう思っていました。』

『今こうやって思っている人も、中にはいるんじゃないでしょうか?』

川満さんのこの一言に、多くの少年たちが小さく頷いた。

そして、川満さんは、

『そんな風に思っていた僕が、今こうしてここに立たせてもらっている。』
『これまでのことを少しだけ話させてください。』

と、これまでの話をはじめた。

水府学院出院後、必死に勉強したこと。高卒認定試験を合格したこと。
大学受験に挑戦したこと。第一志望の大学に合格したこと。
そして、その中で何度も挫折しそうになったこと。

少年たちは、川満さんが発する言葉のひとつひとつを噛みしめるように聴いていた。

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出院した後、葛藤しながらも自分らしく生きる川満さんの姿に、
必死に未来の自分と重ね合わせるようとしているような、そんな印象だった。

“未来”も”過去”も自分の手の中にある

その後、多くの少年たちが2人に質問を投げかけた。

その中に「水府学院にいたことを、隠さないんですか?」という質問があった。

川満さんはその質問に対して、こう語った。

『”未来”も”過去”も、自分次第で変えられるんです。少年院にいた過去も、不安な未来も、今の生き方次第で変えられると僕は信じています』

講演の後、教室は前向きなエネルギーで包まれていた。
今の日本には、まだ光が当たっていない次世代のヒーローたちがいる。
そんなことを強く思った。

僕たちの知らないところで必死に自分と闘う若者がたくさんいること。
そんな若者と全力で向き合うカッコいい法務教官の方々ががたくさんいること。
出所した少年達が行き先がなく、彼らが困っていること。
少年院に興味を持つ人が社会に圧倒的に少ないこと。

まだまだ知られていないこと、知らなくてはならないことが、ここにはある。
少年たちの未来を、可能性を拡げるために、僕たちにできることは何なのか。

そんなことを深く考えた1日だった。

左からハッシャダイ三浦・川満さん・ハッシャダイ勝山